これまで取り上げたのはほとんど昔に読んだ本なので、たまには比較的新しい本もご紹介したいな、といつも思います。
でも実はここんとこ、どうもご紹介したいほどのスマッシュヒットがありません。面白いんだけどなんか惜しいなぁ…というような……かなり狙って買ってるんですがね。
そんな中で今日ご紹介する本は、特にスマッシュヒットだった訳ではないけれど、おそらく私の作家買いリストに加わるだろう幸福な出会いでした。
平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」。
一昨年度の「このミステリーが面白い」、通称「このミス」ランキングで栄えある1位に輝いた短編集です。
著名なランキングである「このミス」とは私、実はそんなに相性が良くないのですが、毎年やっぱり参考にして数冊読んでます。
さて、この「独白するユニバーサル横メルカトル」ですが、ミステリーのランキングに選ばれたものの、ジャンルはホラーに分類されるようです。
あくが強い作品ばかりで、かなりバイオレンス描写が強くスプラッタに近い表現も多々あり、好みが分かれるところだと思います。
ストーリーもブラックと言うより残酷なものが多いので、受け付けない方もいるんじゃないでしょうか。
どちらかといえば私も苦手です。
事実、この本の最初の作品「C10H14N2(ニコチン)と少年」を読み終えた時は、…これは失敗したな、と思いました。
不安になったので順番を飛ばして、7番目に収録されている表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」を次に読んでみました。
日本推理作家協会賞まで取ったというこの作品にかなり期待していたのですが、面白かったものの特筆すべきはこの奇抜なタイトルのみという、残念な感想に終わりました。
ちょっとがっかりして、まぁとにかく全部読もうと、頭に戻って2番目の「Ωの聖餐」を読み進めると…
これが面白い!
なんというか、村上龍の「トパーズ」をミステリ仕立てにしたような印象で(大袈裟なたとえですが)、鬼畜な展開なのに優しさと、そしてなんと言っても惹き付けられる物語がある。
これで大いに気を取り直し読んでいくと、続く作品も、練られたSF小品があったりと楽しく読み進められました。
読み終えてみると、とても面白い短編集でした。
特に気に入ったのは前述の「Ωの聖餐」と「すまじき熱帯」。
改めて考えると、ちゃんと順番通り読めば良かったんだろうな、と。冒頭の作品はあそこに置くべき作品でした。
万人にはお勧めしませんが、「このミス1位」なだけはあります。イケそうならぜひ読んでみてください。
残虐で冷酷な中にも一筋の悲しい優しさを湛えるいびつな小品…そしてそのどれもが娯楽的ストーリーテリングを有する、
「独白するユニバーサル横メルカトル」。
本を読む人で、本当によかった!
長くなってすみません(^^;追記