今日は、先週予告しました「クラインの壷」です。
著者は岡嶋二人。
ちなみにこの著者の最後の作品です。
…と言っても亡くなられた訳ではなく、解散されたのです。「岡嶋二人」は、ドラえもんの藤子不二雄の様に、コンビお二人でのペンネームです。
ミステリとして非常に評判の高い超名作ですが、私が読んだのはわりと最近です。(今、手持ちの本の奥付を見てみたら、2005年3月15日発行となってました。)
名高い「クラインの壷」をいつか読もうと思いつつ縁が無かったのですが、背表紙のデザインが好きで集めてる講談社文庫に入った機会に買いました。
物語は、ひとりの青年の手記として始まります。
何者かにハメられて逃げて来たらしいこの青年。
回想するのは、「クライン2」というバーチャルリアリティ・ゲームマシンに関する奇想天外な話。
彼が書いたゲームブックのシナリオが、制作会社に買い取られ、新しいゲームマシンの原作に使われることになった。
やがて制作会社から呼び出された彼は、最終調整の為にモニターとして「クライン2」をプレイすることになる。
ゲームの世界に入り込んだ彼が、仮想現実と現実との境界で体験したことは…。
こんな感じの話です。
SFっぽい道具仕立てですが、まぎれもない推理小説です。
試作中のクライン2は、身体に直接信号を送り実際にゲームの中に入り込んでる感覚を五感に与えるという、文字通りのバーチャル・リアリティ、革新的なゲームマシンという設定です。
まぁ現実にはこんなシステムまずありえないんですが…少くとも現在は…、そのマシンの描写を読むだけでもわくわくします。
ネタバレになるのであまり詳細は書けませんが、ゲームの仮想世界と現実の生活とがどんどん交錯していくあたりは、面白すぎてくらくらします。
それでいて、正当派ミステリとしてちゃんと謎解きの足掛かりになる鍵をしっかり散りばめている。ミステリファンに長く愛される理由がよくわかります。
そんな見え隠れする伏線を追って振り回されつつ、騙されないぞとしっかり頭を働かせて読んでるのに、気付けば読者自身も表裏の境の無い・クラインの壷の中に閉じ込められているのです。
あぁ、なんでこんな面白い小説を読んでない人がいるんでしょう!
…と素晴らしい本を読み終えて興奮した時によく思うんですが・笑、この本を読んだ時も思いました。
騙される至福。翻弄される快感。
「クラインの壷」。
本を読む人で、本当によかった!
ちなみに写真は、前述した講談社文庫の背表紙です。
写真の色の他にもグレーや青、ピンクなどがありまして、お気に入りで集めてます・笑