さて今日は、現在映画公開中のこれにします。
ずいぶん以前から名作の誉れ高かったこの本、私はあまり興味をそそられなかったのですが、去年本屋で何冊か一度に買ったときになんとなく購入しました。
興味をそそられなかった一番の理由は、おそらく「泣ける話」ブームの時にとりわけ取り上げられていたからでしょうか。ひねくれものなので、「泣ける」というキャッチフレーズを毛嫌いしていたのでした。
著者は梨木香歩。知らない作家さんだと思っていたら、家にもう一冊この方の本がありました。
「西の魔女が死んだ」は、中学生の少女まいが祖母である「西の魔女」と過ごす、ひと夏の物語です。
数多ある「都会の子供が田舎暮らしで元気になった」テンプレ児童書とは次元の違う、素敵なお話です。
とにかく文章が胸を打ちます。
主人公のまいは繊細で多感な少女なのですが、読んでいて苦しくなるほど、気持ちが伝わってきます。自分も歩んできた道程がまざまざと思い出せて、いつしかシンクロして、まいとともにちょっと泣いたり控えめに微笑んだりしてるのです。
詳細なレビューは、ここのところあちこちで見かけるので他に譲りますが、まさしく「泣ける」お話であることは認めざるをえません。
今回この本を読み返して、初読のときと同じように全編に渡り静かな悲しみの中を漂いながら読んだのは、私がもう大人で、幼く弱かった頃の私を懐かしくどこか切なく思い出すからでしょうか。
そして、私がもう大人で、止まることなく確実に過ぎていく残酷な時間の流れのこともよくわかっているからでしょうか。
まいと同じ年頃の方が読んだら、どのように感じるのかな。
魔法も妖精も出てこないけど、まごうことなき「本物の魔女」のお話、
「西の魔女が死んだ」。
本を読む人で、本当によかった!
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